引導の脚本日誌

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6/22習作『会いたくなかった』

課題『宿命』
目標
・宿命とは、逃れられないもの。生まれる前から決まっているもの
 
 

 『会いたくなかった

 
人物
辰野亨(27)会社員
日岡英理子(26)辰野の恋人
佐野竜一(47)辰野の父
林裕也(32)ヤクザ
 
〇マンション・辰野の部屋
 ベッドで並んで寝そべっている辰野亨(27)と日岡英理子(26)。
 2人は全裸。
 辰野は放心した様子で天井を見上げている。
英理子「ねえ、ご挨拶しにいく件、ちゃんとお母様に話してくれた?」
 辰野、寝返りをうち英理子に背を向け、
辰野「いや、まだ……」
英理子「もう。どうしていつもそうなの? 私と結婚してくれる気あるの?」
 辰野、起き上がり、
辰野「(イライラして)そんなこと言ったってよォ、あそこまでエリの母親に反対され といて、じゃあ次はオレのおふくろ、ってわけにもいかんだろ」
英理子「大丈夫よ。お父さんは私の味方だもん。いずれお母さんのほうが折れるわ」
辰野「オレ、エリのお母さんと上手くやっていける自信ないんだよなあ……。だって、普段着が着物だろ? お花の先生ってみんなそうなのかよ?」
英理子「別に同居するわけじゃないんだからいいじゃない。私のお母さんが何を着ようと関係ないでしょ」
辰野「母親が着物なら、父親はふんどしか?」
英理子「もう、バカ言ってないの」
 玄関チャイムが鳴る。
辰野「荷物届いた。受け取りに行ってくんねえ?」
英理子「わたし裸なのよ。自分でいってよ」
 辰野、舌打ちをし、全裸のまま玄関に向かう。
英理子「バカじゃないの! 服着てよ!」
 トランクスを辰野の後頭部に投げつける英理子。
 
〇同・辰野の部屋前・廊下
 玄関ドアがあき、トランクス一丁の辰野がわずらわしそうな顔をのぞかせる。
辰野「サインでいいすか?」
 小林裕也(32)が廊下に立っている。
 小林は黒服にサングラス。
 辰野が軽く咳払いをして、裸の胸元を手で隠す。
辰野「(かしこまり)何か御用でしょうか……?」
小林「男を探している。この男を見てないか?」
 佐野竜一の写真を見せる小林。
辰野「見たことないです。誰ですか?」
小林「昨日まで刑務所にいた男だ。今日刑務 所を出所したあと、行方をくらました」
辰野「凶悪犯、なんですか?」
小林「20数年前にうちの組の親父を殺した 殺人犯だ」
 青ざめる辰野。
辰野「その殺人犯がこのあたりをうろついてるってことですか?」
小林「もしとぼけてるなら大したもんだが、佐野は、辰野亨、お前に会いにくるかもしれないんだよ」
辰野「は? それってどういう……?」
小林「この男、佐野竜一はお前の父親だ」
辰野「……本当、なんですか?」
小林「あとで母親に聞いてみるんだな」
辰野「オレ、父親は、オレが生まれる前に別 れたって聞いてて……」
小林「それなら情もないだろ。もし佐野がやってきたら、ここに連絡しろ」
 名刺を差しだす小林。
辰野「もし連絡したらどうなるんですか?」
小林「聞きたいのか?」
辰野「……」
小林「それより自分の身を心配したらどうだ? もし、黙ってこの男を匿うようなことがあ れば……」
 凄みを利かせて睨む小林。ツバをのむ辰野。
 部屋に戻ってくる辰野。
 服を着てベッドに座っている英理子。
英理子「遅かったね。なんだったの?」
辰野「しつこい勧誘でさ……。やってる最中にこなくてよかったな」
英理子「バカなこと言ってないで服着て」
 英理子、辰野に服をつきつける。
 辰野、服を受け取らず、ベッドに寝転がる。
英理子「ねえ、その格好で荷物の受け取りとか恥ずかしいからやめてよ。それだったら私でるから」
辰野「なあ、エリ。わるいんだが、今日はもう帰ってくれないか?」
英理子「この後出かける約束でしょ?」
辰野「頼むよ。埋め合わせはする」
英理子「理由教えてよ」
辰野「そ、それは……」
英理子「私に言えない理由なの?」
辰野「……」
 玄関チャイムの音が鳴る。
 英理子、立ち上がり、
英理子「私でるよ」
辰野「(血相を変え)ちょっと待て!」
 英理子、辰野に服を投げつけ、
英理子「(イタズラっぽく)私に見られたくないものなら、早く服を着た方がいいんじ ゃない」
 玄関に歩いていく英理子。
 急いで服を着て、玄関に向かう辰野。
 辰野が玄関に着くと、ドアがあいている。英理子の前に佐野竜一(47)が立っている。
佐野「亨……か?」
英理子「ねえ、たしかお父様は亡くなられたって……」
 青ざめる辰野。
辰野「出てけよ。オレはアンタに用はない」
佐野「たのむ、亨。話をさせてくれ」
辰野「ダメだ。今すぐここから消えろよ」
英理子「ちょっとトオル。お父様に向かって、それはないんじゃないの? さ、お父様。中にどうぞ」
佐野「たのむ、亨」
 辰野、佐野に耳打ちして、
辰野「(小声で)エリに刑務所のこと言ったらタダじゃおかない」
佐野「ああ、分かってるよ」
   部屋に向かう3人。
辰野「母さんに電話する。いいよな?」
佐野「ああ……」
英理子「(嬉しそうに)飲み物、用意しますね」
   部屋からでる辰野。
   小林の名刺を見ながら、携帯に番号に打ち込み、電話する。
辰野「……辰野です。佐野が来ました。引き取ってもらえますか」
   部屋に戻る辰野。
   英理子が愛想のよい表情でお茶を淹れている。
   辰野、英理子の肩をつかみ、
辰野「エリ、今すぐコンビニで飲み物買ってきてくれ」
英理子「もうお茶をおだししてるけど」
辰野「2人で話したいことがあるんだよ。親父のこと黙ってたのは悪かったが、オレも会うのは20数年ぶりなんだ。たのむよ」
英理子「分かった。私のこと、後でちゃんと紹介してよ」
 ホッと胸をなでおろす辰野。
 玄関チャイムの音。
 辰野、ツバをのんで玄関のほうを見る。
 佐野が立ち上がって、緊張した様子で玄関のほうを注視する。
英理子「ようやく荷物届いたのね。受け取ってくるわね」
 佐野が背後から英理子に近づき、英理子を羽交い絞めにする。
英理子「きゃっ。お父様、いったい何?」
佐野「亨……。オレを売ったのか?」
辰野「エリをはなせ!」
佐野「母さんは言わなかったはずだ。オレのこと誰に聞いた?」
 佐野、包丁を取りだし英理子の首につきつける。
 ドンドン、と玄関ドアがノックされる。
英理子「(半泣きで)ねえトオル、お父様。どういうことなの?」
辰野「親父、エリをはなせ!」
 ガンッとドアを蹴破る鈍い音がして、何者かが部屋に侵入してくる足音。黒服の男たちと小林が入ってくる。
英理子「(声が震えて)ねえ、なに? なんなのこれ?」
小林「佐野、おまえには死んでもらう」
佐野「近づくな! 近づけば女の首を切る!」
 英理子の嗚咽。
小林「また刑務所に戻る気か?」
辰野「やめろっ親父!」
 小林と黒服の男たちが懐から拳銃を取りだし、佐野に向ける。
辰野「ウソだろ、やめてくれっ!」
 佐野に飛びかかる辰野。英理子を突き飛ばす。
 銃声。
 額を撃ち抜かれてくずれ落ちる佐野。
 英理子を突き飛ばしたときの姿勢のまま固まる辰野の目が見開かれる。
 辰野の胸に包丁が刺さっている。
 服にジワりとにじむ血。辰野の額に脂汗が浮き出る。
辰野「……エリ、無事か?」
 辰野に駆け寄り、手を握る英理子。
英理子「(泣きながら)トオル! しっかりして。いま救急車、呼ぶから!」
 辰野、苦しそうな表情で隣に倒れてい   る佐野を見る。
辰野「クソ親父……。おまえなんていなけりゃよかったんだ……」
 遠くから救急車のサイレンの音。
 
/了
 
 
あとで追記するかも
 
 
※自分の評価
1幕モノとして書いた。
時間経過も柱も移動しないので、劇として上演できるタイプのシナリオ。
1幕モノをかくのにはコツがいるので、練習のため書いた。
キャラクターは結構お気に入り。
反省点は、
主人公のメインの葛藤にするべき柱、
父親を売るか売らないかで迷わせるべきだったこと
 
2016/6/22引導