引導の脚本日誌

現在シナリオ勉強中!の引導のシナリオを掲載していきます

9/14習作『招かれざる父』

課題:結婚式

 

1か月ぶりの更新です。これはつまり、

1か月シナリオを書いてなかったということです(

 

今回は、アイデアとしてはかなりイケると思って書きました。

 

『招かれざる父』

人物

小林幸一(48)会社員
田村総一郎(44)会社員
庄司正雄(50)小林の上司(部長)
伊藤伸介(49)会社員(部長)
松原吉江(46)小林の元妻(※声のみ)
松原由香(24)小林の娘(※声のみ)
 
 
〇株式会社金村技研・外観
 従業員数三〇〇人クラスの本社ビル。
 
〇同・設計部オフィス
 デスクで書類をにらみながら、PCで文書作成している小林幸一(48)。
 小林、気難しそうな表情。
 庄司正雄(50)が早足で、キビキビとした動作で小林のデスクにやってくる。
庄司「(ニコニコして)幸ちゃん」
   小林の手が止まり、振り向く。
小林「部長、どうかしましたか?」
庄司「やりたい言ってた案件、今日の会議で幸ちゃん指名しといたから。でも本当に大丈夫? いま大変でしょ? 主任の案件が炎上中じゃないの。今月、休みなくなるんじゃない?」
小林「平気ですよ。私は家族サービスとは無縁なので」
 小林、誰も座っていないデスクを睨む。
 デスクには家族写真の写真立てが置かれている。
庄司「マア、田村クンは有給消化社内イチだからねえ……」
小林「娘の大学の卒業式なんて理由で休むなんて信じられませんよ。成人してる娘なんて、もう子供じゃないでしょう?」
庄司「まあまあ。いくつになっても可愛いもんだよ」
小林「……」
庄司「すまんが、今日はもう上がらせてもらうよ。午後は半休で、病院で検査なんだ。 この前の健康診断でひっかかってね」
小林「お大事にしてください」
庄司「平気、平気。なんともないよ」
 庄司、ニコニコしながら立ち去る。
 PCに向かう小林、眉間にしわを寄せ、書類作成を再開する。
 
〇マンション・外観(夜)
 
〇同・内(夜)
 玄関から小林が入ってくる。
 手にはDMなどの郵便物と夕刊。
 郵便物をテーブルに置き、冷蔵庫から缶ビールを取りだす。
 固定電話の留守電メッセージのランプが点滅している。
 缶ビールの封を切り、留守電メッセージのボタンを押す。
吉江の声(電話)「吉江です。お久しぶりです。元気ですか?」
 小林驚いた顔をし、ビールを置き、固定電話の前まで歩いてくる。
吉江の声「由香には止められたけど、やっぱり幸一さんには連絡したほうがいいと思って。由香が次の日曜日に結婚します。詳しくは招待状のコピーを送ったから、それを見てください」
 小林、郵便物の束を漁り始める。
 茶封筒を見つけ、開封する。
 結婚式の招待状の白黒コピーが入っている。
小林「正式に呼ばれてないのに行けるものか……」
 小林、招待状を丸めてゴミ箱に捨てる。
 
〇株式会社・金村技研・食堂
 1人で黙々と食堂の定食を食べる小林。
 田村総一郎(44)がニヤニヤしながらやってきて、小林の向かいに座る。
 小林、不服そうな顔で田村を見る。
 田村、ナプキンに包まれたお弁当箱を広げる。
田村「……小林さんの娘さんっておいくつでしたっけ?」
小林「(不愛想に)今年で25だ」
田村「なら、そろそろ結婚の話とかあったりします?」
 小林、食べる動作がピタリと止まる。
小林「どうだろうな」
田村「昨日、うちの娘が大学の卒業式だったんですけどね。振袖姿が美人で、写真見ますか?」
 スマートフォンを操作する田村。
小林「見せてくれなくて結構。他の人に見せたらどうだ?」
田村「小林さん以外にはもう見せちゃったんですよ。ほら、どうですか? 美人でしょ う?」
 忌々しげに舌打ちする小林。
小林「娘と言っても、もういい年した大人だろう? 子供じゃあるまいし……」
田村「そんなことないですって。まだまだ子供ですよ。少なくとも、結婚するまでは」
小林「そうか……」
田村「そういえば、庄司部長、今日お休みですけど何か知りませんか? 相談したいこ とがあったんですけど……」
小林「昨日は再検査で早引けしたけど、元気そうだったよ」
田村「どうしたんでしょうねぇ」
 小林の胸ポケットのPHSが鳴る。
小林「……もしもし小林です」
伊藤の声「伊藤です。ゴゴイチから緊急で会 議をするので出席してください」
小林「急ですね。議題はなんですか?」
伊藤の声「……庄司部長が先ほど亡くなられた」
 ハッとして田村の顔を見る小林。
 スマフォの画面を見て、ニヤニヤしている田村。
 
〇同・設計部
 全社員たちの視線が伊藤伸介(49)に集まっている。
伊藤「亡くなられた庄司部長の葬儀は日曜に行われます。参列は課長以上数名で、弔辞は小林課長にお願いしました……」
 真剣な表情で話を聞く小林。
 
〇マンション・小林の部屋(夜)
 パソコンに文字を入力する小林。
 手元には『葬式のあいさつ』という本。
 携帯電話の着信音が鳴る。
小林「もしもし?」
吉江の声「吉江です。留守電聞いてくれた?」
小林「ああ……」
吉江の声「由香の結婚式なんだけど、出席できるよね?」
小林「それなんだが、上司が突然亡くなったんだ。葬式が日曜でかぶってる」
吉江の声「両方、でることはできないの? こっちにちょっと顔をだす、とか……」
小林「無理だ。葬式は上司の実家の四国で行われる……」
吉江の声「ねぇ、あなたのたった一人の娘なのよ。こんなときまで家族より会社を優先 させるの!?」
小林「……」
由香の声「ねぇ、お母さん! もしかしてお父さんと電話してないよね!? ちょっと電話貸して」
 受話器の向こうから騒がしい音。
由香の声「ねえ、お父さん。聞いてる? お母さんから結婚式のこと聞いたんだろうけ ど、絶対こないでね。お父さんのこと許してないから。お母さんと離婚してからは、他人だと思ってるし。もし、無理やりきてもお父さんの席、ないから」
小林「そうか……」
吉江の声「ああ、幸一さん。ごめんなさい。由香はああ言ってるけど…」
小林「葬式にでるよ。それじゃ」
吉江の声「幸一さん!」
 電話を切って、パソコンに向かう小林。
 本の弔辞の言葉、のページを開きながら、文書を作成しはじめる。
 数文字、パソコンに打ち込んだところで小林の手が止まる。
 握りこぶしが震え、テーブルを叩く。
 ゆっくりとゴミ箱に視線を向ける小林。
 
〇新幹線の駅・ホーム
 新幹線のホーム。
 ホームに並ぶ小林、田村、伊藤。
 3人とも喪服。
 田村、小林に耳打ちして、
田村「知ってました? 今日の弔辞を読んだ人が後釜の部長候補なんだって噂になってますよ。小林さん羨ましいなあ」
 小林、心ここにあらずといった表情。
田村「あ、新幹線きましたね」
 メールの着信音。
 小林が携帯を開くと、吉江からメール。
 『結婚式はじまったよ。来ないの?』
 新幹線のドアが開き、列が動きだす。
 その場で固まっている小林。
小林「…………」
田村「どうしたんスか? 乗りましょうよ」
小林「なあ、田村。本当はいつもお前のこと羨ましいって思ってたよ」
 プルルとドアが閉まる警報。
田村「ちょっと! ドア閉まっちゃいますよ!」
 新幹線内から手をのばす田村。
 小林、田村の手に畳んだ紙を渡す。
 閉まるドア。
小林「弔辞は任せた。私は娘の結婚式に行く。娘の結婚式に行くんだぁ!」
 ゆっくりと動きだす新幹線。
 呆然としている田村。
小林「私の娘だって美人なんだ!」
 田村、満面の笑みでGOGOと拳でジェスチャーする。
 遠ざかっていく新幹線。
小林「やってしまったなぁ……」
 フッと自虐的に笑い、尻ポケットからぐしゃぐしゃの招待状を取りだす。
 晴れ晴れとした顔で駅のホームから走りだす。
 
/了

 

『仕事熱心で出世にしか興味がない会社員が、離婚した妻の娘が結婚すると知る。娘から歓迎されていないことを知り、身を引こうとするが、上司が突然死に、結婚式と同じ日に葬式をするという! しかも葬儀で弔辞を読むことになってしまう! そのうえ娘から『結婚式に絶対くるな』と電話がかかってくるのであった。しかし、葬儀会場に向かう新幹線に乗り込もうとしたとき足が止まってしまう。閉まる新幹線のドア、発車する新幹線。招待状のコピーを握りしめ、招かれざる結婚式会場に向かうのだった…』

3行ログラインかこうと思ったらあらすじだこれ!

 

3行。

『仕事熱心で出世にしか興味ない会社員が、別れた妻との娘の結婚式と上司の葬式の日が重なり、葬式会場に向かうがすんでのところで結婚式場にUターンする話』

という感じでしょうか。

 

この作品は、ぼくが創作で一番やりたいことが入っています。

このブログに4月ごろに更新した『傷だらけの募金箱』というシナリオがあるのですが、基本的にやってることは同じだと思います。

簡単にいえば、曲がった性格の男が、自分の心の奥底の欲望に素直になる話です。

それまでの過去のあやまちや、人間関係、それらに圧殺され、押し殺されている感情、その感情の解放こそが、救済なんじゃないでしょうか?

登場人物の歪んだ心の解放こそが、美徳だと思うのです。

 

先生のご意見

構成はよくできている。

どうしても、1つ言いたいことがある。

『離婚した理由は決めたほうがいい』 

>ぼくの弱い部分ではあるのですが、設定を雑に作っています。

>『仕事をあまりに優先しすぎて家族を顧みなかった』くらいでいいだろうという気持ちでいたのですが、それだと説明がつかないことがあります。

>それは…

どうして、元妻には結婚式に誘われ、娘には拒否られるのか??

>ということです。元妻と娘の2人に好感度の差があるということは、娘だけに迷惑をかけることになって離婚することになったのか?

>電話での元妻の(やさしい)対応を見る限り、元妻の態度は冷たくありません。なら、どうして離婚になったのか??

>逆のパターンならありえます。娘は父親に結婚式にきてほしいけど、元妻との仲は離婚の原因のせいで険悪で、来てほしくない。これはありえる。

>これはすべてぼくが離婚原因を『主人公が仕事を優先して家庭を顧みなかった』という雰囲気曖昧な設定しか作ってないことによって、妻との関係性がブレているのです。

発表後にこっそり修正したのですが、主人公と元妻の電話シーンで、

 

吉江の声「由香には止められたけど、やっぱりあなたには連絡したほうがいいと思って。

 

 吉江の声「ああ、お父さん。ごめんなさい。由香はああ言ってるけど…」

 などと書いており、

離婚した夫を『あなた』とか『お父さん』とは呼ばねえよ!

と自分で気づいたのでした。

(※修正されてます)

つまり、離婚した設定を曖昧にしたせいで、元妻のキャラがブレてるのですね。

 

しくじり先生風にいえば、

『設定を具体的にきめなかったせいで、キャラの性格ブレちゃった』先生

という感じですね。

話の根幹にかかわる設定は、具体的EPを考えておいたほうがいいということですね。

心に刻み込むべき先生のアドバイスでした。

 

 

(おまけ)

――友人の結婚式に出席してきました。

結婚式終盤の新婦の父親のスピーチにほろりとさせられました。

『娘(嫁さん)を絶対に幸せにする、なんて簡単に言うんじゃない! 夫婦の幸せとは、2人で模索しあって探し続けるものだ!』

良いお言葉をありがとうございました。

 

2016/9/14引導