引導の脚本日誌

現在シナリオ勉強中!の引導のシナリオを掲載していきます

4/5習作 『傷だらけの募金箱』

課題:魅力ある男

枚数:20枚

 

目標:

・主人公が魅力ある男

・この主人公、どうなるんだろう?と思わせる

・カッコイイだけじゃない魅力もある

 

傷だらけの募金箱

課題:魅力ある男

人 物
黒咲慎一(6)・(17)・(28)ヤクザ
洲崎深白(23)シスター
シスター
ヤクザA
ヤクザB
黒咲の母
黒咲の父

 

◯ターミナル駅・駅前の道
 高層ビルが立ち並ぶ駅前。
 多くの人たちでごった返している。
 シスター服を着た若い女性たちが募金箱を持ち、募金を呼びかけている。
 その中に、シスターの洲崎深白(みしろ)(22)。
 『聖礼会』と書かれた看板。
 通行人の男性が深白の前に立ち、財布を取り出す。
深白「(笑顔で)ありがとうございます。あなたに神のご加護がありますように」
 深白の差しだす募金箱をつかむ男。
深白「きゃっ」
 男が募金箱を力ずくで奪う。
 人波をかきわけて逃走する男。
深白「(追いかけて)待って!」
 深白から男の背中が離れてゆく。
 走りながら男がふり返り、遠ざかる深白にあくどい笑み。
 男が前方のスーツの男性にぶつかる。
 スーツの男性がふり返る。
 スーツの男、黒咲慎一(28)、目の上に傷跡があり、どうみてもヤクザ。
黒咲「あアん? なんだテメエ」
 逃げ出そうとする男の肩をつかむ黒咲。
黒咲「ぶつかったら、謝るのが筋じゃねえのか?」
 男、泣き笑いで何度も頷く。
 とろくさい駆け足で深白がやってくる。
 募金箱を置いて逃げだす男。
黒咲「おい待て、こいつは……」
 募金箱を拾い上げる黒咲。
 黒咲を見つめる深白。
深白「(何か言いたげな表情で黒咲を見る)」
黒咲「……これ、アンタのか?」
深白「そこで募金活動をしていて、引ったくりに遭ってしまって……」
黒咲「そいつは災難だったな」
深白「(微笑して)助けていただいて、ありがとうございます。お優しいんですね」
 黒咲、表情がこわばる。
 募金箱を持つ手に力がこもる。

◯フラッシュ・黒咲の家・リビング
 子供時代の黒咲(6)、母親に頭をなでられて笑顔。

◯ターミナル駅・駅前の道
 募金箱を持つ手に力をこめる黒咲。
 不思議そうに黒咲を見つめる深白。
深白「……募金箱返していただけますか?」
 ハッとして顔を上げる黒咲、額に汗。
 黒咲、力任せに募金箱を地面に叩きつける。
 呆然とする深白。
 募金箱を踏みつけて破壊する黒咲。
 小銭があたりに散らばる。
 シスター仲間の一人が駆けつける。
 黒咲、背中を向けて立ち去る。
 無言で黒咲に道をあける周囲の人。
シスターA「ヤバいよ、あの人。警察に通報しようよ」
 深白、粉砕された募金箱を悲しそうな顔で見つめる。

◯若林組・事務所内
 ソファで話している若いヤクザたち。
 ヤクザの一人は、頬にガーゼがテープで留められていて、片目に青アザ。
ヤクザA「どうしたんだ、その顔?」
ヤクザB「黒咲の兄貴にやられた。機嫌わるいといつもこうなんだ」
ヤクザA「そりゃ理不尽な話だな」
ヤクザB「みんな不満だよ。怖くて誰も逆らえねえんだ。怖い噂もあるしな」
ヤクザA「どんな?」
ヤクザB「なんでも18んときにキレて父親をバットで殴って半殺しにしたらしい。今でも寝たきりって話だ」
ヤクザA「親に対してフツーそこまでやるか?」
 扉があいて、黒咲が入ってくる。
 黒咲を見るなり恐縮し、ソファから立ち上がってお辞儀する2人。
ヤクザA・B「兄貴、お疲れ様です!」
 眉間に皺をよせ2人の顔を見る黒咲。
 ヤクザAの胸ぐらをつかみ、拳をふりかぶる。

◯駅前・道
 私鉄の駅前。
 不動産屋や飲食店などが立ち並ぶ。
 人通りはそこそこ。
 黒咲とヤクザA・Bが歩いている。
 ヤクザA・Bともに顔に青アザ。
 黒咲の進行方向から募金活動の声。
 深白を含むシスターたちが路上で募金活動をしている。
 足が止まる黒咲、苦い表情。
ヤクザB「どうしました、兄貴?」
黒咲「……なんでもない」
 平静を装い歩き始める黒咲、早足。
 シスターたちとすれ違うとき、深白が気づいて、
深白「あ、あの。先日はどうも」
 足を止める黒咲、眉間にシワ。
ヤクザB「兄貴、知り合いですか?」
黒咲「(長い沈黙)ちょっとな」
 首をかしげるヤクザA・B。
 シスターが警官を連れてやってきて、
シスター「おまわりさん! あの人です」
 ギョッとするヤクザA・B。
ヤクザA「兄貴! ズラかりましょう」
 ヤクザA・Bにせかされ、逃げる黒咲。

◯神社・境内(夜)
 古びた鈴と賽銭箱があるだけの神社。社にはクモの巣。
 投げ入れられる5円玉の賽銭。
黒咲M「あの女に二度と会いませんように」
 賽銭箱の前で手を合わせる黒咲。

◯回想・黒咲の家・リビング(夜)
 学ランを着た黒咲(17)、救急箱からガーゼを取りだし、母の顔に貼る。
黒咲「母さん、大丈夫?」
母「(微笑し)慎一、アンタは優しいね」
 まんざらでもない顔の黒咲。
 ふすまをあけ、父親が入ってくる。
 黒咲を母から引きはがし、母を乱暴に蹴る父親、怒鳴って、
父「どうして酒を切らしてる!」
 床で丸まる母を何度も踏みつける父、母は泣きながら許しを乞う。
 泣きそうな顔で父を見つめる黒咲、呼吸が苦しそうに荒くなっている。
 父、乱暴に救急箱を蹴り、怯える母。
 黒咲、部屋を飛び出す。

◯回想・黒咲の家・玄関(夜)
 肩を上下させ呼吸をする黒咲。
 傘たての金属バットを見ている。

◯神社・境内(夜
 賽銭箱の前で手を合わせている黒咲。
 鳥居をくぐって黒づくめの男たちがやってくる。全員、覆面で手にバットや鉄パイプなどを持っている。
 背後をふり返る黒咲。
 覆面の男がバットをふりかぶっている。
 黒咲、驚愕の表情。
 バットが黒咲の肩にふり下ろされる。
 背後の男たちが黒咲を囲んで、バットや鉄パイプで殴りつける。

◯神社・遠景(夜)

◯同内・境内(夜)
 血を流して倒れている黒咲。
 黒咲の指がピクリと動く。
 顔を上げると、額から大量の出血。
 鼻が折れていて、あふれでる鼻血。
 賽銭箱によりかかって立ち上がる。
 血を吐き出すと、歯が混じっている。
 前髪をかきあげ、自虐的に笑う黒咲。
 フラついた足どりで歩きだす。

◯修道院『聖礼会』前・道(夜)
 フラついた足どりで歩いている黒咲。
 通りかかる修道院の表札を見ると、『聖礼会』。
黒咲「(目を細める)」
 黒咲、道を引き返そうとするが倒れてしまう。
 道をはいつくばって、路地に入る。
 路地の電柱にもたれかかって座る黒咲、苦しそうに呼吸している。
 路地の向こうを、黒づくめの男たちが通りかかる。手にはスポーツバッグ。
 覆面はしておらず、ヤクザA・Bもその中にいる。
ヤクザA「あの野郎、無様だったな。ざまあみろってんだ」
ヤクザB「なあ、あそこにいる女って」
 薄目をあけて息を殺す黒咲。
ヤクザAの声「あー。募金の。黒咲の女!」
ヤクザBの声「おい、アンタ」
深白の声「……なんでしょうか?」
ヤクザAの声「こいつだ、間違いねえ」
ヤクザBの声「用があんだ。一緒に来い」
深白の声「なんですか、やめてください。きゃっ!」
 黒咲の呼吸、荒くなる。
深白の声「あのっ! やめてください。警察呼びますよ? きゃあっ!」
 黒咲の呼吸、さらに荒くなる。
深白の声「いやあっ! やめて!」
 電柱を支えにして立ち上がる黒咲。
 ゆらりと路地を出てゆく。

/了

 

 

魅力』とはなんなのでしょうか?

頭がよくてスポーツができてお金持ちなのが魅力?

いいえ、そんな人間は鼻につきます。

――どうしようもないクズみたいな男の、なけなしの正義感にも、譲れないモノはある。

そんなことを考えながら書きました。

ヤクザのこともっと勉強しないとわかんないですね(笑)

 

ちなみにこれを書いているときにつかんだコツとは、

冒頭で主人公に(一般常識からみて)非常識な行動をさせる

という手法。

主人公に興味をもってもらう最良の方法だと思いました。

 

2016/4/5引導