2/2習作 『サビぬきデート』
課題『よろこび』
枚数:14枚
課題の目的:
"アンチ"を利用した"よろこび"の表現
(=前半部で悲しいことがあって、後半のよろこびと対比になっている構造)
ぼく自身がバブみに飢えているのか、
バブみを感じる内容になりました。
今回の課題はよくできたと思います。
『サビぬきデート』
人物
葛西道成(30)会社員
村上琴子(8)葛西の娘
岡崎友紀(23)葛西の友人コンビニ店員
床屋店長
寿司屋店員
◯駅前・商店街(夕)
歩きながらスマフォで通話している葛西道成(30)。葛西「せっかく誘ってもらって悪いが、今日は久しぶりのデートなんでな。悪いな」
通りがかる店のショーウィンドウでヘアースタイルをチェックし、微笑む。
◯駅前・コンビニ・内(夕)
自動ドアから葛西が店内に入ってくる。
缶コーヒーを1本、レジの店員に渡す。店員「お会計、120円になります」
ズボンの後ろポケットに手をつっこむ葛西、首をかしげる。
ズボンのポケットをすべて裏返し、棒立ちの姿勢で固まる。
葛西「スミマセン。これ、キャンセルで」
顔面蒼白でふらついた足取りの葛西。
◯ヘアーサロン・クリモト・外観(夕)◯同・店内(夕)
個人経営の床屋。
入り口の自動ドアにぶつかりそうな勢いで葛西が来店する。
客の髪をカットしている店長、ギョッとして手が止まる。
店長「……いらっしゃいませー。どうかいたしましたか?」
葛西「財布の忘れ物ありませんでしたか?」
店長「今日はみてないですねえ」
葛西「少し探しても?」
店長「(手で示して)ええ、どうぞどうぞ」
床屋の床にクモのようにはいつくばり、必死の形相で目を光らせる葛西。
店長「あのー……財布はどのような色の?」
携帯電話の着信がして、
葛西がピンと立ち上がりスマフォを取り出す。
受信されていたメールを開く。
差出人は"琴子"、
本文に『駅についたよ~。どこ?』
と絵文字がちりばめられている。
泣きそうに顔をゆがめる葛西。
◯駅・改札前(夕)
駅改札前の大きな円柱にもたれかかっている村上琴子(8)。
不安げな表情。
改札口に走ってくる葛西。
乱れた呼吸を整えながら、改札付近を端から端まで見回す。
琴子、視界に葛西を見つけ、笑顔に。
琴子「お父さん!」
駆け寄って葛西の腰にとびつく琴子。
葛西「久しぶり。元気にしてたか、琴子?」
葛西、琴子の頭をなで、こめかみから汗を流しながらも安らかな表情。
◯回転寿司チェーン店『テング寿司』・外観(夕)◯同・受付(夕)
コンベアで寿司の皿が流れている。
レジ前のソファに受付票をもって、おとなしく座る琴子、
その前に立つ葛西。
琴子「(興奮して)お父さん、次だよ」
葛西「……琴子、お父さんちょっと電話してくるから、ここで待っててくれないか」
琴子「(頬をふくらませ)早く戻ってきてよ」
琴子の頭をなで、店を出る葛西。
◯同・入口(夕)
店の入り口で電話している葛西。
葛西「頼むって! ホントヤバイんだよ。1円も持ってないのに店入っちゃってさ。いやいや、言えるわけないだろ。
お父さん財布落としちゃったから、今日の食事はナシです……なんて!
1ヶ月ぶりなんだぞ? ……よし、じゃあ30分後な、駐車場で」脱力して、フーッと息をつく葛西。
◯同・内・テーブル席(夕)
テーブルに皿が3枚積まれている。
琴子はサーモンの寿司を食べながら、ご満悦。
葛西は琴子をみて満足げに微笑み、お茶を湯のみに注いでやる。
葛西「新しいお父さんとは、上手くやってるのか?」
琴子「……あんまり。好きじゃない」
葛西「(暗い表情で)そうか……」
しょうゆのついた指をなめる琴子。
葛西「(やさしげに)こら、はしたないぞ」
琴子「……お父さんは食べないの?」
葛西「(腕時計をみて)ああ、食べるよ。その前にちょっとトイレ行ってくるな」
席から立ち上がる葛西に、少し不満そうな琴子。
◯同・入口(夕)
岡崎友紀(23)からお札を受け取る葛西。岡崎「ホントに5千円で足りるんですか?」
葛西「問題ない。この借りは必ず返すよ」
走って店内に戻ろうとする葛西の顔に店のノボリがぶつかる。
ノボリには『特上フォアグラ握り2千円』の広告が。
葛西「こんなもん食べるやつがいるか!」
はきすて、店に駆ける。
◯同内・テーブル席(夕)
スッキリした顔で席に戻ってくる葛西。
琴子の前には金色の皿が積まれている。琴子「(フォアグラ寿司を口に運びながら)お父さん、これ美味しいよ!」
一瞬、固まる葛西。
琴子「お父さんもこれ食べて元気だして!」
沈痛な面持ちで席に腰を下ろす葛西。
琴子「どうしたの? これキライだった?」
不思議そうに葛西の顔をのぞく琴子。
◯同内・レジ(夕)
5千円札を1枚レジにだして店員に頭をさげる葛西。
会計表示は7千円。葛西「すみません。今これだけしかなくて」
店員「(困惑して)……店長呼んできます」
琴子が心配そうに店に入ってくる。
琴子「お父さん、どうしたの?」
レジの表示とトレイのお札をみる琴子。
琴子「……お金足りないの?」
葛西「(気まずそうに)うん……」
琴子、ポーチから1万円札をだして、
琴子「じゃあ、はいこれ!」
ビックリした顔で琴子を見つめる葛西。
◯公園・内(夕)
琴子を肩車して散歩する葛西。葛西「なんか、今日はごめんな」
琴子「いいの! 私、お父さん大好きだから。お父さんは私が養ってあげるね!」
琴子が葛西の頭をやさしくなでる。
葛西はギュッと琴子の手を握る。
葛西の頬を伝う涙が夕日に光る。
/了
今回は、面白い展開になるように設定を考えました。
"どういう風に展開していけば面白いか?"ということを先に考え、
設定をそれに合わせました。
具体的に言うと、
1:男がデート直前に財布を失くしてしまう
2:デート相手は誰だったから一番面白いか?
3:同年代の女性だと財布がなくてもお金を借りれるからダメだな
4:じゃあデート相手はお金もってないロリにしよう!
(これで財布を落としたことがより致命的な問題になる!)
そういう思考で考えました。
課題の"よろこび"ですが、
最初は、なくした財布が見つかる、というのを考えてましたが、
ページ数が足らんなあと感じたので、
財布をなくしたことにより、より2人の絆を感じ取れる路線に変更しました。
ちなみに本文中にはかいてないですが、
琴子がお金をもってた理由は"新しいお父さんにお小遣いとしてもらった"
からです。
お金をもってる新しいお父さんより、お金がないけどお父さんが好き、
といってくれる幼女はいいものですね。
2016/2/4 引導