引導の脚本日誌

現在シナリオ勉強中!の引導のシナリオを掲載していきます

2/10習作 『お見合い相手の飼育員』

 

課題:出会い

枚数:16枚

 

課題の目的

重要人物たちが出会って、面白そうだな、と期待をあおる。

 

 

お見合い相手の飼育員

人物
冬野カナ(25)会社員
犬吠時也(23)カナのお見合い相手
店員
 
◯高層ビル・外観(夜)

◯同内・女子トイレ(夜)
 洗面台の鏡の前で化粧直しをする冬野カナ(25)、胸元の大きくあいた黒いブラウスを着ている。
 鏡の前に直立し、鏡の中の自分をチェックする。
 深呼吸して、
カナ「よし!」
 大声で気合いを入れる。
 隣にいる女性が驚いて、カナを見る。
 大股でトイレを立ち去るカナ。

同内・エレベーターホール(夜)
 閉まろうとするエレベーターの扉。
 向こうから、歩きづらそうなヒールで走ってくるカナ。
カナ「そのエレベーター! ちょっと待ったー!」
 ハンドバッグを強引に扉のすきまに挟んで、扉をこじあける。
 
◯同・エレベーター内(夜)
 エレベーターの中に入るカナ、紳士・淑女然とした老夫婦たちが数組乗っている。
 息を切らすカナを見て、クスクスと微笑する。
 照れたように笑って応えるカナ。

◯高層ビル52F・スカイラウンジ『Genius』(夜)
 高層ビルから眺める夜景。
 夜景を見ながら、ワインを飲んだり、食事をたのしむ客たち。
 客たちは全員、フォーマルな服装。

 店の入り口から大股でやってくるカナ。
 後ろにくっついている店員が、
店員「お客様、困ります。……失礼ですが、ご予約は?」
 カナ、後ろをふり返らず、
カナ「ああ、ダイジョブ、ダイジョブ。予約はカレがしてくれてるハズだから」
店員「お連れ様のお名前は?」
カナ「それが忘れちゃって。だからこうして、直接カオを探してるんだけど」

 店員の制止をふりきり、店内を動き回るカナ。
 客たちは渋い表情。

店員「お客様、困ります。お連れ様のお名前を思い出していただけないと、ご案内は……」
カナ「思い出した! たしか、犬なんとかって言うあんまり見ない名字。えーっと……」
 店員、キョトンとする。

店員「もしかして、犬吠(いぬぼう)様ではございませんか?」
カナ「あっ! そうそう。それそれ」
店員「VIPルームをご用意しております。こちらにどうぞ」
 ギョッとしてカナの背中を見つめる周囲の客たち。

◯同内・VIPルーム(夜)
 広い空間に小さい丸テーブルが1つ。
 映画館のスクリーンのように広い窓ガラスの向こうに宝石のような夜景。
 一歩一歩薄い氷の上でも歩くような足どりで、カナ、テーブルへ。
 テーブルには、ヨレヨレのTシャツとジーパンをはいている犬吠時也(23)がテーブルに足をのせて、夜景を見ている。
 カナ、犬吠の格好を見て、眉をひそめる。
カナ「あのー。こんばんは。はじめまして、冬野カナです」
 
 犬吠、眠そうな顔をカナに向けて、上から下まで見て、
犬吠「……ちがう」
 不機嫌そうにソッポをむいて、夜景に体ごと向ける犬吠。
カナ「……はい?」

 表面上は愛想よい笑顔のまま、顔の筋肉がひきつるカナ。
 耳元の髪をかきあげながら、
カナ「それはどういう意味――」
 
犬吠「(いぶかしがる視線でカナを見て)きみは誰だ? カノジョはどうしてこない?」
カナ「だから、アタシがそのお見合い相手よ! なによ! そんなに写真と実物がちがうのが不満? 写真の加工なんてみんなやってるでしょ!」
 感情的にまくしたてて、わざとらしくドスンと椅子に腰をおろすカナ。
 カナに気圧され、目を白黒させる犬吠。
 
カナ「……アンタの考えは分かったわ。アタシをからかってるのよね? だと思ったわ。そうじゃなきゃ資産家の御曹司が庶民で美人でもないアタシに興味もつわけないしね」
  何がなにやら分からないという表情でカナを見つめる犬吠。
 
カナ「いいわ。さっさと料理をだしなさい。全部食べきって帰ってやるわよ。ほら、早くアタシの料理をもってきなさい!」
 
  ×   ×   ×
 
 カナのテーブルに、キャットフードのようなツナを缶詰の形に固めたペースト状の料理がのった皿がおいてある。
 手にフォークとナイフを持ち、紙エプロンの前かけをするカナ。
 カナ「……なにこれ」
 犬吠「きみの為に用意したものじゃない」
  ナイフで切り分けて口に運ぶカナ。
 
カナ「……変わった味ね。なんなのこれ? フォアグラとかそういうの?」
犬吠「キャットフードだ」
 せきこむカナ。
 
カナ「……えっ何だって?」
犬吠「だからキャットフードだよ。ここのシェフお手製のね」
 
 カナ、犬吠の胸ぐらにつかみかかって、
 カナ「ちょっ、何てもの食べさせてんのよ!」
犬吠「食材にこだわった最高級の……」
 カナ「アタシのことバカにするのもいい加減にして! お見合い相手すらペット感覚ってワケ?」
 バン、とテーブルを両手でたたいて、席から立ち上がるカナ。
 
犬吠「次、いつ会える? どうしてもカノジョと会いたいんだ」
カナ「アンタなんてお断り! 二度とゴメンよ」
 大股で床を地ならししながら立ち去るカナ。
 犬吠、スマートフォンを取りだして、タイトル『見合い写真』をひらく。
 そこには、猫をだいてやさしげに微笑むカナの姿。
 写真を見て、ため息をつく犬吠。
 
○カナのアパート・カナの部屋
  猫のえさ皿にキャットフードを流し込みながら電話しているカナ。
カナ「ホント最悪だったわよ。金持ちの悪趣味にしても性格わるすぎない? キャットフードよ?」
  皿を床におくと、カナの飼い猫のキャラメルが走ってきて、食べ始める。ピンポーンとチャイム音。
 
カナ「ごめん、荷物きたから切るね」
 玄関にかけだすカナ。
 カナ「はーい」
 ドアをあけるとそこには犬吠がいる。
 
 反射的に扉を閉めようとするカナだが、強引に部屋の中に入ってくる犬吠。
カナ「ちょっと!」
 
 犬吠を追いかけて部屋に入ると、犬吠が猫のキャラメルを抱きしめている。
 ニ"ャーッとキャラメルの悲鳴。
 犬吠の顔や手には血がにじんでいる。
 
犬吠「(幸せそうに頬ずりしながら)初めて見たときからきみしかないと思ってた」
 
カナ「(驚愕して)猫フェチ!?」
  カナをほうを見ず猫と格闘する犬吠。
 
/了